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西アフリカにおける資源開発と貿易保険
独立行政法人 日本貿易保険 パリ事務所 所長 坂口 利彦(さかぐち・としひこ)
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1.はじめに
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内戦の収束化、民主化プロセスの進展に伴い西アフリカは、資源開発に注目が集まり先進国による投資が活発化してきており、資源を有する国はその開発を経済再建・貧困対策に結びつけていくことが課題となっている。また、原油供給源の多様化の要請を背景に油田・ガス田の探鉱・開発が近年活発に進められており、石油生産量が増加するとともに、石油価格先高感が続く中でアンゴラを中心とする西アフリカ沖の大水深での探鉱活動が生産に移行していくことが期待されている。他方、多くの国は対外累積債務を抱えており、資源開発・インフラ整備等に必要な新規ファイナンスを確保していくにあたって解決すべき問題となっている。以下では貿易保険の視点からみた各国の動向等について紹介したい。
まず、現在の石油生産量(2003年BP統計)で西アフリカの上位5カ国であるナイジェリア(218.5万B/d)、アンゴラ(88.5万B/d)、赤道ギニア(24.9万B/d)、コンゴ共和国(24.3万B/d)、ガボン(24.0万B/d)について、世銀統計(2003年)から経済指標等を比較すると次の表のとおり。
表1 西アフリカの主要産油国の経済データ
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人口(百万人) |
GNI(億ドル) |
1人GNI(ドル) |
対外債務(億ドル) |
石油埋蔵量(億B) |
| ナイジェリア |
135.7 |
43.7 |
347 |
350.8 |
343 |
| アンゴラ |
13.5 |
10.3 |
760 |
101.3※ |
89 |
| 赤道ギニア |
0.49 |
−(2.9 GDP) |
− |
3.2 |
− |
| コンゴ共和国 |
3.8 |
2.4 |
640 |
51.5 ※ |
15 |
| ガボン |
1.3 |
4.8 |
3,580 |
37.9 |
24 |
※は2002年の数字。石油埋蔵量はBP統計
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2.ナイジェリア
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99年に選出されたオバサンジョ大統領が民主的な選挙の初めての成功の下で2003年4月に再選されたが、地域・民族・宗教対立の緩和、汚職・貧困の撲滅に取り組み、経済構造調整を引き続き進め、対外債務問題に取り組んでいくことが課題となっている(注1)。ナイジェリアは貿易保険にとってはイラクに次ぐ第二のリスケ債務国であることに示されるように、かつて日本企業が石油精製、石油化学、肥料プラント等多くのプロジェクトにかかわっていた国であり、ナイジェリアはアフリカ最大の人口(1.3億人)を擁するとともに最大の産油国であり政治的安定・経済改革が進めば石油ガス関連を中心にプラントビジネスの機会も拡大していくと期待されている。
石油生産はニジェール川デルタ地帯が中心で、メジャーとナイジェリア石油公社(NNPC)との合弁会社(JV)により生産されており、ShellとのJVが石油生産の約4割を占めている。ただし、JV方式ではNNPCが拠出すべきキャッシュ・コールの予算手当ができず延滞となり、開発が遅れるという問題が生じている。沖合の鉱区については生産分与方式(PSA)で、探鉱・開発が進められている。1990年、2000年に鉱区の国際入札が実施され、大水深地域でも開発が進められ、生産能力は2003年末に280百万バレル/日となり、ナイジェリア政府は2005年には400百万/バレルに引き上げる計画である。ただし、OPECの生産枠による制限、ニジェール川デルタ地帯での部族紛争、デルタ地帯での生産縮小に反対する労働組合によるストライキ等の問題を抱えている。
天然ガスについては、ナイジェリア政府の政策として2008年までに随伴ガスのフレアを廃止するために、石油企業に対してガス利用の促進を求めており、1999年10月には、NLNGプラント(Nigeria Liquid Natural Gas)が稼働した。NLNG社は、NNPC(49%)、Shell(25.6%)、Total(15%)、Agip(10.4%)のJVでプラントはボニー島に、我が国企業も参加したJVであるTSKJにより3つのトレインが完成し、現在第4・5トレインが建設中で、第6トレインも発注された。第4・5トレインについては、先行するプロジェクトのキャッシュフロー・資産を担保にすることにより、米輸銀、ECGD、SACE、Gerling-NCM(当時)による800百万ドルのECAファイナンス、ローカル商業銀行160百万ドル、アフリカ開銀100百万ドルの3つのトランシェからなる計1,060百万ドルのプロジェクト・ファイナンスによる資金調達が行われた。また、現在検討されているLNGプロジェクトは次のとおり。
表2 ナイジェリアのLNGプロジェクト
| NLNG拡張プロジェクト |
Totalの鉱区からのガス供給でNLNG7・8を増設する計画。 |
| Brass LNGプロジェクト |
Agip、ConocoPhillip、ChevronTexacoとNNPCがスポンサーとなって、沖合にFPSOで浮体式LNG設備をつくるプロジェクト。 |
| Nwadoro Floating LNGプロジェクト |
ShellとStatoilにより、沖合にFPSOで浮体式LNG設備をつくるプロジェクト |
| West Niger Delta LNGプロジェクト |
オンショアのサイトでChevron TexacoがConocoとExxonMobileとで進める計画。ただし、スポンサー間でガス供給の合意が困難となり中断され、ChevronTexacoはBrass LNGに参加し、当初の5百万トンのシングルトレインの計画を倍増することとなった。 |
また、ChevronTexacoは、随伴ガスを利用するEscravos gas project(EGP)を進めており、第1フェーズが1997年から稼働し、2002年には第2フェーズとして285百万立法フィート/日のガス処理能力に拡大した。生産される天然ガスはナイジェリア国内にパイプラインで供給されており、またLPGは日本企業が製造した浮体式LPG貯蔵積出設備(Escravos LPG FSO)から輸出されている。現在計画されている第3フェーズでは、2007年後半までに処理能力を680百万立方フィート/日に引き上げる予定である。ChevronTexacoはEGP IIIとともにEscravos gas-to-liquids project(EGTL)を進めており、これはSasolのプロセスを用いてGTLを生産するもので、FEEDは既に終了し2007年の生産開始を計画している。また、ChevronTexacoがコンソーシアムをリードし世銀が支援(50百万ドルの融資と60百万ドルの保証を予定)するWest African Gas Pipeline(WAGP)プロジェクトは、天然ガスをナイジェリアのEscravosからベナン、トーゴ、ガーナに輸出する海底パイプラインによる総延長600kmのガスパイプラインのプロジェクトであり、2006年に開通することが計画されている。
天然ガス輸出のためのパイプラインの計画としては、ナイジェリアからニジェールを通過して地中海沿岸のアルジェリアの輸出ターミナルまでをつなぐTrans-Saharan Gas Pipeline 構想もあるが、4,000km・70億ドルという壮大な計画となっている。
ExxonMobileは、天然ガス利用のために、ガス再注入のEast Area Additional Oil Recoveryプロジェクト、NGL回収設備追加のEast Area Natural Gas Liquidプロジェクトを進めている。
我が国のエンジニアリング会社、商社、プラントメーカーは、これらのLNGプラント、ガス処理プラント、FSO、パイプライン等の案件をフォローしており、貿易保険に対するニーズも出てくる見通しである。中長期案件の引き受けについては、引受方針はケースバイケースとなっており、債務問題の動向を注視する必要はあるものの、しっかりしたセキュリティーを組んだプロジェクト・ファイナンスであれば可能性があると考えられる。
表3 西アフリカ主要国に関するNEXIの引受方針
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貿一短期 |
貿一中長期/海事 |
投資(非償還) |
| ナイジェリア |
○ 5億円 12カ月 L/C条件 |
△ |
△ |
| アンゴラ |
▲ |
× |
△ |
| 赤道ギニア |
○ 5億円 12カ月 L/C条件 |
× |
△ |
| コンゴ共和国 |
○ 5億円 12カ月 L/C条件 |
未設定 |
未設定 |
| ガボン |
○ 5億円 12カ月 L/C条件 |
× |
△ |
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3.アンゴラ、赤道ギニア
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アンゴラは、反政府ゲリラUNITA(アンゴラ全面独立民族同盟)のザヴィンビ議長が2002年2月に戦死しUNITAが弱体化したことを契機に和平機運が高まり、4月に政府軍とUNITA軍との間で停戦合意の覚書が調停され内戦が事実上終結した。現在、反政府軍の武装解除・動員解除が進み、国民和解・国家再建のプロセスが進展しつつあるものの、国際社会からの本格的な財政支援を得るためには石油収支の透明化、ガバナンス能力向上への取り組み等が求められている(注2)。
石油生産は、国営石油公社のSonangolと外資(メジャー)との生産分与形式(PSA)による開発が進められており、2008年には生産量が倍増すると見込まれている。現在の生産量のうち、55万バレル/日が北部の飛び地であるCabindaのオフショアのBlock 0でChevronTexacoの子会社のCABGOC(Cabinda Gulf Oil Company)をオペレータとして生産されている。アンゴラでシェア1位のChevronTexacoに加えExxonMobile、Total、BP、ENI等が探鉱・開発に取り組んでおり、我が国企業も、アンゴラ石油等権益を取得し生産を行ったり、Sonangolから原油の引き取りを担保とするローン、航空機、自動車等の輸出のアレンジが行われている。
石油の生産増に伴い、85%がフレアとして燃やされている随伴ガスをLPGの生産に向けることが進められている。CABGOCは、洋上でのLPG生産等に取り組んでおり、我が国メーカーはFPSO(Floating Storage and Offloading Unit)によるLPGの生産・貯蔵・積み出し設備の製造を受注している。また、LNGプロジェクトの構想がChevronTexaco(36.4%)とSonangol(22.8%)を中心に進められており、BP(13.6%)、Total(13.6%)、ExxonMobile(13.6%)がパートナーとなっている。
表4 アンゴラ、赤道ギニアのLNGプロジェクト
| アンゴラLNG |
5百万トンの1トレイン、コストは30〜40億ドル。FEED(front-end engineering and design)はベクテルが受注。FEEDは18カ月を要する見通しで、その後にパートナーは投資の最終決定。長期契約によるLNG引取先なしで、赤道ギニアのLNGに先んじてプロジェクトを開始することを意図。
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| 赤道ギニアLNG |
Marathon Oil が国営石油公社のEG Petrolと進めるLNGプロジェクト。3.4百万トンの1トレイン、事業総額14億ドルとされ、EPCはBechtelが受注。BGとの引取契約が締結され、2007年稼働を計画。ファイナンスはスポンサーによるオウンファイナンスの見込み。
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ただし、アンゴラは、IMFによる支援の実現、パリクラブ債権国との関係の正常化が求められており、累積した債務問題を解決することが課題となっており債務削減となる可能性も否定できないことから、中長期のファイナンスに保険を供与する状況に直ちになるとは考えにくい。他方、海外投資保険については、2004年8月6日に非償還型についてケースバイケースに引受方針が緩和されたことから、鉱区の権益の取得等をはじめ我が国企業による投資に対する保険付保の利用が可能となっている。
アンゴラは、石油、ダイヤモンド以外にも豊富な天然資源を有し、かつては鉄鉱石も産出したことから、将来的には鉱物資源の開発への取り組みも期待される。また、治安の改善が図られれば内戦後の安定復興需要に対応して建機等の輸出に対する短期の貿易保険付保等のニーズが生じてくると考えられ、そのような場合には債務問題や外貨事情・外貨規制の状況などに留意しつつ、引受方針の検討が求められよう。
赤道ギニアは、79年のクーデター以来ンゲマ大統領が政権を維持し、96年の3選以降民主化の動きも進められているが野党勢力への人権抑圧等の問題があり、96年に発見された石油収入を国内インフラ開発、貧困対策等に適正に用いていくことが課題となっている。
米企業を中心とする石油開発に加え、Marathon Oilは天然ガスをLNGで輸出するプロジェクトを進めており、LNGプラントのEPCは米企業が受注したが、オフショアでの石油、ガス関連のプロジェクトを日本企業もフォローしている。投資保険はケースバイケースとなっているが、投資に加え中長期の利用のニーズが出てくることなれば、カントリーの状況等を踏まえつつ引受方針の検討が求められると考えられる。
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4.コンゴ共和国、ガボン
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両国ともにフランスの旧植民地であるが、コンゴ共和国は90年代初めに旧社会主義国から共和国への転換を行い、複数政党制を導入したものの与野党間対立が繰り返され97年には内戦に至ったが99年末に停戦合意がなされ後は民主化プロセスが軌道に乗っている。他方、ガボンは、ボンゴ大統領の下で30年間以上にわたり政治的には安定的に推移しておりその間90年には複数政党制への移行を行い民主化が進展している。
経済的には、ガボンは石油に依存する経済構造で、油価の低迷等により対外債務問題を繰り返すとともに、新規油田の発見に恵まれず近年生産量が減少しあと10年の埋蔵量と言われており、木材やマンガン鉱等の非石油産業を育成していくことが課題となっている。債務問題については、ガボンは債務削減対象国ではないものの、2003年6月にパリクラブリスケが再度行われたが抜本的な解決には至っていない。
コンゴ共和国はここ数年原油生産量が減少したが、新規油田開発により今後の生産増が見込まれてはいるものの、IMF・世銀による支援を得て復興に取り組み累積債務問題を解決していくことが求められており、近々HIPCs(重債務貧困国)として債務救済を受けることが見込まれている(ただし、貿易保険債権はない)。
こうした状況にあることから、中長期のファイナンスに対する貿易保険の付保の再開はしばらくの間困難であると見込まれる。◆
本稿は、11月15日現在の情報に基づくものであり、また評価・意見等に及ぶところはあくまで筆者個人の見解であって組織の立場を述べたものではない点にご留意いただきたい。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
注1:大統領選挙後に結成された新経済チームは、独自の改革プログラムとして国家経済強化開発戦略
(NEEDS)を策定し、IMFにはプログラムによる支援ではなくモニタリングのみを求めている。また、パ リクラブに対しては、2003年はリスケ合意(2000年12月)に基づく要支払額約20億ドルの半分に当た
る約10億ドルの支払いが行われ2004年も10億ドルの支払いが予定されているものの、中長期的に
は維持不可能な債務水準にあるとして、将来的にはエビアンアプローチに基づく債務再編の対象と
なる可能性があるとの見方もあるが、ナイジェリアは現在IMFプログラムを求めないとしていることか
ら、今後の議論の見通しは不透明な状況にある。
注2:停戦合意後、2003年に入ってからアンゴラはIMF等との関係を正常化することに再度取り組み始
め、将来のPRGF(Poverty Reduction and Growth Facility)を見据えてSMP(Staff Monitoring
Program)を再開すべく調整中。問題となっているのは、対外債務の数字が明確でなくアンゴラ政府
の対外債務管理能力が低いことにある。パリクラブとの関係では、石油担保融資による一部債権国
のみへの返済が問題となっているが、IMFの正式なプログラムに移行できればパリクラブによる債務
のリスケが行われると見込まれる。
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