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貿易保険を活用したマレーシア支援

  1. 背景
    昨年12月21日、マレーシアの産業インフラ整備を支援するため、我が国貿易保険を活用した大規模な融資が実行された。9月中旬に与謝野通商産業大臣がア セアン諸国を訪問した際に、マハティール首相から支援の検討要請がなされてから3ヶ月で融資を実現することができたこととなる。
    アセアン諸国の訪問の際、与謝野大臣は、「アセアン・イニシアティブ」において、アセアン諸国内の需要喚起及び域内経済発展のポテンシャルを活かすための 産業インフラ整備に対し、円借款等の公的支援とともに、我が国民間に蓄積する資金を環流する手段の検討を発表した。本提案に対して、当省貿易保険部局が貿 易保険の活用を検討した結果が結実したものである。
    これまでの我が国政府からの資金面での支援は、円借款と政府系金融機関による低利融資が中心であった。しかしながら、我が国金融機関の創意と貿易保険の柔 軟かつ厳格な適用により、執行について即効性のある新たな協力スキームを提供することができた。
    投資家へ配布した目論見書や種々の金融情報誌によってすでに本スキームが広く公表されていることから、今後、同様のスキームを活用した貸付が、内外の金融 機関等から行われることが予測される。そうなれば、融資を受ける国々の資金調達が促進され、より一層経済政策運営が促進されることになろう。


  2. 支援スキーム
    現下の経済情勢では、マレーシアが市場で資金調達をした場合、高金利にならざるをえない。実際、昨夏、マレーシア政府は相当のリスク・プレミアムで米国市場からの資金調達を試みようとしたが、結果的には国債発行を断念した経緯がある。
    一方、我が国民間銀行のアセアン諸国向け融資に対し貿易保険(海外事業資金貸付保険 資金貸付保険)を付保すれば、融資金利は、保険料及び諸費用を含めても、通常の市場対応の場合と比べ、非常に低金利とすることが可能となる。
    さらに、本マレーシア支援では、住友銀行が融資財源を確保するために、対マレーシア融資に保険が付保されることを前提に、SPC(特別目的会社)にユーロ 円債を発行させ、野村証券がその債券を引受することによって、内外の投資家から低コストで資金調達することを可能とした。SPCが発行した債券はAaaの 格付けを取得でき、マレーシア政府はマレーシアリスクを日本政府リスクと掛け合わせることによって、低利での資金調達が行えた。
    貿易保険にとって、このようなクレジット・リンク債への貿易保険の活用は初めてのケースとなる。本件が他の融資の呼び水となり、マレーシアへの大規模な資金提供がその経済の回復を促進することを期待したい。
    貿易保険では、市場で引き受けることができなかったリスクを引き受けることとなったため、今後、マレーシア政府からの返済がなされるまでの間、定期的にマ レーシアを訪問し、経済の見通し、産業インフラ整備の進捗状況、経済政策の運営状況等について調査を行い、マレーシア政府との対話を継続していくこととし ている。

  3. 貿易保険の適用範囲
    このような貿易保険を活用した資金調達は、本ケースに見られるような政府直貸しに限られるものではない。優良なプロジェクト・ファイナンス案件や企業への貸付にも活用ができる。
    貿易保険を活用した融資スキームは、当省によるアセアン諸国への支援という政策課題のもとに実行されため、付保の対象として、大規模な資金規模を許容する こととした。しかしながら、これ以外の全ての側面は、通常の貿易保険における引受手続きに従うこととなるため、金利、手数料また保険料の分担等の融資条件 については貸付者と調達元とがビジネスベースで決定することが前提となる。したがって、融資についての商談がまとまらない場合、貿易保険を活用した支援は 行えないこととなる。
    貿易保険を活用したマレーシア支援
    【融資条件】
    -金額:740億円(5.6億ドル相当)
    -期間:5年後一括返済
    -投資家への償還金利:1.5%
    【融資スキーム】
    1*、2* SPC2がユーロ円債740億円を発行。野村証券を通じて、内外の投資家から資金を調達。貿易保険の付保率に合わせ、二種類の債券が発行。一方は、貿易保険を活用したAaa債券。他方は、マレーシアリスクが反映された債券。
    3、*4*、5* SPC2は調達した資金を住友銀行に預金。住友銀行はSPC1を通じて貸付を実行。
    6*、7* 上記貸付に対し海外事業資金貸付保険を付保。被保険者であるSPC1は本邦法人の必要あり。
    8*、9*、10*、11* マレーシア政府は、貸付元本及び金利を返済。返済がなされなかった場合、保険金が投資家への償還に充当。


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