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貿易保険を活用したタイ支援


1999年5月 1日

1.背景

本年4月21日、タイの産業インフラ整備を支援するため、我が国貿易保険を活用した大規模な資金調達支援が実行された。昨年11月下旬に、与謝野通商産業大臣に対しチュアン首相から資金調達支援の要請がなされ、これが実現されたものである。
アセアン諸国の産業インフラ整備のための資金調達支援は、昨年9月中旬に与謝野大臣がアセアン諸国訪問の際に発表した「アセアン・イニシアティブ」におい て位置付けられている。その実現の第一弾として、昨年12月下旬に貿易保険を活用したマレーシアに対する740億円の支援を実施済みである。今回のタイ支 援は、アセアン諸国の産業インフラ整備支援の第二弾となる。
これまでの我が国政府からの資金面での支援は、円借款と政府系金融機関による低利融資とが中心であった。これに対し、貿易保険の適用により、我が国民間企業に存する資金を支援のために活用することを可能となった。

2.支援スキーム

タイの経済状況の回復を反映し、金融関係者のタイのリスク評価は緩和してきているものの、依然として、タイが市場で資金調達をした場合、高金利とならざるをえない。
このような問題を解決し、タイの産業インフラ整備を支援するため、本邦投資家がタイ政府又はタイ公共企業体の発行する国債又は社債を購入した際、償還され ない場合に備え貿易保険の付保を行うこととした。これにより、タイ債券のリスクプレミアムが低下するため保険料及び諸費用を含めても、通常の市場対応の場 合と比べ、金利を低く押さえることが可能となる。
貿易保険にとって、債券の購入に対する付保は本件が初めてである。昨年のマレーシア支援の際には住友銀行並びに野村証券とともにクレジット・リンク債の発 行を初めて実施した。これらの新たなスキームを適用することにより、今後、個別のプロジェクトにおけるファイナンス組成が多角化できると考える。
本件タイ支援について、通産省はタイ政府に対し、総額5億ドル相当円の保険の引受を表明している。今次の債券発行は、その内の第一次トランシェで、2.4 億ドル相当円のタイ石油公社(PTT)社債となっている。今後のトランシェも含め、タイ政府が社債の支払保証を行っている。シティーバンク・ジャパンがタ イ政府との金利条件等の交渉及び債券販売諸手続を行い、同銀行をはじめとする在日の外国銀行、生命保険会社、損害保険会社等9社が債券を購入した。第一次 トランシェは、タイ石油公社が行うガスパイプライン事業に充当される。第二次トランシェ以降のプロジェクト及びその実施主体、具体的な債券発行日程につい ては明らかとなっていない。

3.今後の対応

このような貿易保険を活用した資金調達は、本ケースや昨年のマレーシア支援に見られるように政府向け支援に限られるものではない。むしろ、優良なプロジェ クト・ファイナンス案件や企業による資金調達へ適用していけば、これらの事業のファイナンスが多様化され、プロジェクトの組成が促進されるものと考える。

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