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カントリーレビュー

チュニジアなど3ヶ国の国カテゴリーを変更-OECDカントリーリスク専門家会合における国カテゴリーの見直しについて-

 NEXIはカントリーリスクの度合いに応じて、225の国・地域に対して、AからHまでの国カテゴリーを付与している。このうち141ヶ国・地域の国カテゴリーはOECDカントリーリスク専門家会合における格付けの結果に準拠している。
 2017年1月25日-26日の2日間、パリのOECD本部において、第77回OECDカントリーリスク専門家会合が開催され、ヨーロッパ・CIS、中東・北アフリカ地域の国カテゴリーが議論された。議論の結果、以下の3ヶ国の国カテゴリーが変更となった。

  • 格上げ
    ・セルビア 「G」→「F」
    ・ブルガリア 「E」→「D」
  • 格下げ
    ・チュニジア「E」→「F」

 本稿では格下げとなったチュニジアの政治・経済状況を概観することとする。

【チュニジア】1

<ポイント>

・政治改革は進んでいるが、政局は流動的であり、連立政権が崩壊する恐れも指摘されている。
・財政再建の取り組みは遅れており、今後、公的債務が増加して、窮地に陥る可能性がある。

1. 「アラブの春」の震源地-現在も政局は流動的-

 チュニジアは2010年から中東・北アフリカ地域を席巻した「アラブの春」の発端となった国である。2010年末、失業などに対する若年層の不満が政府への抗議運動に発展した。これに一般市民も加わり、長期政権に対する大規模な反政府運動へと繋がった。これを受け、2011年1月14日、23年もの間、国家元首の座にあったベン・アリ大統領は国外に亡命し、同政権は崩壊した。政権崩壊後、新憲法の施行(2014年2月)、議会選挙(2014年10月)、大統領選挙(2014年11月~12月)を経て、政治改革は進み、2016年8月からはシェーヘド首相が政権を率いている。しかしながら、同国の政権は6政党による連立政権で、それぞれの政策に違いがあることから、2019年の次期選挙まで政権が維持できないとする見方がある。

2. 「アラブの春」以降、経済の改善は見られず

 政治面では一定の改革が進んだものの、「アラブの春」の一因となった失業率の高止まり(2011年:18.3%→2015年:15.2%)等の経済問題は解決されていない。
 財政収支については経済復興や社会的緊張の緩和に向け、公共事業や補助金の歳出が増えたことから悪化傾向にある。また歳出の45%超を占める公務員給料の高止まりも財政収支の悪化に寄与し、2015年の財政赤字は対GDP比4.4%を記録した。
 慢性的な財政赤字から、公的債務も積み上がっている。2015年の公的債務は2011年より対GDP比で10%程増加して、54.6%に達した。

3. IMFの融資を受け、財政再建を進める

 かかる状況下、チュニジア政府はIMFに金融支援を要請した。2016年5月20日、IMF理事会はExtended Fund Facilityの枠組みの下、29億ドル(融資期間:4年間)の融資を承認し、第1回目の融資(3億1950万ドル)は直ちに実行された。同国政府は融資を受ける条件として、財政再建に取り組むこととなった。
 今後の財政の見通しについて、IMFは楽観視している。IMF(2016年6月)は2021年にかけて、公務員給料の削減と燃料補助金の削減によって、歳出の削減が進み、財政赤字は対GDP比4.4%(2016年)から、同1.7%(2021年)に改善すると予測している。これに伴って、公的債務は対GDP比54.6%(2016年)から同46.4%(2021年)に縮小すると見込まれている。

4. 民間シンクタンクの見通し

 他方、大手シンクタンクや格付け機関はIMFと異なった予測をしている。例えば、英国の大手シンクタンクEIU社(2017年1月)は、公務員給料の削減について、連立政権で政権が不安定である上、労働組合の反発が予想されることから、実施は困難になると見ている。また税収の増加も緩やかに留まることから、2017年から2021年にかけて、対GDP比で約4~5%程度の財政赤字が生じると予測している。その結果、公的債務はさらに拡大し、対GDP比67%に達すると見込まれている(2010年:対GDP比40.6%→2021年:同67.4%)。

5. IMFの2回目の融資は延期に

 現実は民間予測に近いものとなっている。政府による財政再建の取り組みは遅れており、IMF(2017年2月)は「緊急の対応が必要」と指摘している。2017年2月26日にはIMFの2回目の融資が延期されたことが公表された。延期した理由として、公務員給与削減の遅れが指摘され、IMFが同国政府の取り組みに不満を持っていることが表面化した。今後、同国政府は断固たる意思をもって、歳出削減を続けなければ、公的債務は維持不可能な水準に陥る恐れもある。


1 本カントリーレビューの中の意見や考え方に関する部分は筆者個人としての見解を示すものであり、日本貿易保険(NEXI)としての公式見解を示すものではありません。尚、信頼できると判断した情報等に基づいて、作成されていますが、その正確性・確実性を保証するものではありません。