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特集
NEXI登録バイヤーからみる海外企業の財務状況について ~アジア地域~

審査部与信管理グループ


 NEXIでは、短期保険(2年未満案件)の引受に先立って、毎年1万数千社にのぼる海外企業(以下、バイヤーとします)の格付審査を行っています。そのうち、財務情報を開示していないバイヤーを除き、一定の財務状況が把握できるバイヤー約5,000社について、所在国別・業種別に支払能力等に関する傾向を2016年12月に分析しました。
 分析対象がNEXI短期保険の利用実績がある、もしくは利用を予定しているバイヤーであることから、必ずしも所在国別・業種別の一般的な傾向を把握できているとは限りませんが、貿易保険ユーザーの取引相手という観点からは一定の示唆が得られると考えられます。今後、取引先の支払能力等の水準を検証する際のご参考となれば幸いです。
 なお、本文中の図表・グラフについては全てNEXIが作成しました。

1. 分析対象バイヤー

 2014/4~2015/3の決算期に基づき格付審査を実施したバイヤーをみると、法制度等の理由により、財務データの開示状況は国・地域毎に異なります(文末の参考資料をご参照)。
 分析対象となる最新財務データの開示があるバイヤーについては、全体に占める地域別の内訳はアジア61%、欧州・北米23%、南米7%等となり、業種別の内訳は製造業60%、卸売業24%、サービス業(金融・不動産含む)7%等となりました。
 今回、国別には審査件数が多いアジア地域の主要国10ヶ国について分析しました。また、特に件数の多い中国、タイ、韓国、インド(アジア地域の中で、それぞれ24%、19%、15%、10%をシェア)は、業種別として製造業・卸売業についても分析対象としました。

最新財務データの開示があるバイヤーの地域別件数割合

最新財務データの開示があるバイヤーの業種別件数割合

 

2. 支払能力・財務安全性に関する3つの分析

 格付審査における着眼点でもある3つの指標(1)買入債務回転期間(平均支払期間であり、短い方が良い)、(2)有利子負債比率(低い方が良く、短期よりも長期が望ましい)、(3)総資産額・自己資本比率(バイヤーの規模・安全性であり、一般的には大きい方が安定的である場合が多い)について、次の通り分析しました。

(1)買入債務回転期間(平均支払期間)
 平均支払期間(買入債務÷売上高(月商))については、国別(アジア地域)に見ると、中国が2.46ヶ月と長く、最も短い韓国1.03ヶ月と1ヶ月以上の違いがあります。
 これは、商慣行の違い、登録バイヤーの業種の偏り、借入金利といった調達コストの違い等、複数の要因が想定されます。バイヤーとしては、期間が長い方が資金繰りに好都合ですが、輸出者の立場で回収に着目すると短い方が好ましいと考えられます。

平均購入債務回転期間(アジア地域・主要国)
(参考)全地域の主要国の平均:1.75ヶ月

 業種別にみると、いずれも上記の国別と傾向は似通っており、中国は製造業・卸売業ともに2ヶ月を超過し、韓国は約1ヶ月と短く、韓国のバイヤーは、支払が早い傾向があります。

国別・業種別の買入債務回転期間(単位:月)
国別・業種別の買入債務回転期間(単位:月)
(参考)全地域の主要国の平均:製造業1.72ヶ月、卸売業1.82ヶ月

 

(2)「短期・長期」有利子負債比率
 有利子負債比率(長期・短期合計)については、国別(アジア地域)にみると、32.6%とインドは借入依存度が高く、マレーシアは9.4%と低い結果が得られました。なお、ベトナム・中国・タイ・マレーシアは、有利子負債全体に占める短期の比率が60%超と高く、資金調達は短期に偏る傾向がありますが、インド・シンガポール・フィリピンは、比較的長期で資金調達している傾向がありました。

「短期・長期」有利子負債比率(アジア地域・主要国)
(参考)全地域の主要国の平均は、有利子負債比率 18.6%、うち短期の比率 43.9%

 業種別にみると、有利子負債比率は、大半の国で製造業、卸売業は全業種の平均より低くなり、特にインドは、全業種平均の32.6%と比較すると製造業で25.9%、卸売業で21.0%といずれもかなり低い水準となりました。
 有利子負債全体に占める短期の比率については、中国は製造業73.9%、卸売業93.5%と他国と比較して短期借入の依存度が高くなりました。前述の平均支払期間も考慮すると、中国のバイヤーの資金調達は買入債務及び短期借入に偏る傾向があるようです。

国別・業種別の「短期・長期」有利子負債比率
国別・業種別の買入債務回転期間(単位:月)
(参考)占有率は、有利子負債の合計に占める短期の割合を算出

(3)総資産額・自己資本比率
 総資産額・純資産額は、分析対象バイヤーに上場企業が占める割合(上場割合)が高い国(台湾・インド等)ほど大きくなりました。東南アジア諸国は総じて小規模ですが、非上場企業であっても国の制度等により財務情報を得やすい状況があることが影響しています。
(注)インドネシアは、財務情報が得られる非上場企業が少なく、結果的に上場割合が高くなっています。
 自己資本比率は、アジア諸国は他の地域より高めであり安定性は高いものの、小規模バイヤーが多く借入自体が少ないためであるとも推察されます。

平均資産規模・自己資本比率(アジア地域・主要国)
(参考)全地域の主要国の平均:自己資本比率38.5%

 業種別にみると、総資産額・純資産額は、4ヶ国全てで製造業が卸売業を上回り、特にインドは、製造業と卸売業の総資産額は約45倍と規模の差が大きくなりました。
 自己資本比率は、タイの製造業に特徴がみられ、資産規模は大きくないものの自己資本比率は55.6%と高い結果となりました。中国のバイヤーは、いずれの業種も自己資本比率は他国よりも低い結果となりました。

国別・業種別の平均資産規模・自己資本比率  (単位:百万円)
国別・業種別の平均資産規模・自己資本比率(単位:百万円)

3. まとめ

 今回の分析対象バイヤーは、冒頭にも示したとおり、最新の財務情報の取得状況に影響を受けることから特定の地域・業種に集中しています。従って、財務分析についても限定的な内容となりました。しかしながら、そのなかでも国及び業種による特徴がいくつかみてとれます。

  • ・中国のバイヤーは、他国に比べると平均支払期間が長くかつ短期借入への依存度も高め。自己資本比率は、主要国平均を下回る。
  • ・東南アジアのバイヤーは、平均支払期間は主要国平均よりやや短いが短期借入への依存度は高め。また、資産規模は小規模、自己資本比率は高めという特徴を有する。なお、タイ・フィリピンは、最新財務情報の開示比率が高い。
  • ・韓国のバイヤーは、平均支払期間が短く取引先としては好ましい。有利子負債比率はやや高く、上場企業が占める割合も比較的高め。また、製造業の資産規模が大きいこと、最新の財務情報開示の割合が高いことが特徴的。
  • ・インドのバイヤーは、国全体の分析対象バイヤーに占める製造業の割合が77%と最も高く、資産規模を含め製造業の特徴が最も強い。上場企業が占める割合も高め。平均支払期間は主要国平均より長く、有利子負債比率は高いものの、長期で安定的に資金調達している。

 国別の平均支払期間や調達方法の違いは、当該バイヤーの支払振りに直接影響を与えるものではありませんが、お取引のご参考となれば幸いです。


<参考資料>

(1)バイヤー審査実績(件数)より作成した財務情報の国別開示状況

国別・業種別の平均資産規模・自己資本比率(単位:百万円)

全体の平均を5とした場合における最新の財務情報の開示状況です。NEXIの審査実績より、バイヤー登録件数上位国を指数化して表示しました。なお、1は該当ありませんでした。

(2)分析対象バイヤーの国別・業種別割合

主要国の業種別・登録件数割合

登録件数が上位の国から順に表示しています。各国の分析値は、業種の構成比にも相応の影響を受けています。例えば、中国とシンガポールは母集団に大きな違いがみられます。